『JAPAN OPEN 2006』公式サイトの紹介文より
『トレードマークのステップと情熱的な演技で世界を魅了するソルトレークの金メダリスト』
アレクセイ・ヤグディンは、割と来日回数が多い人だと思う。でも、このジャパン・オープンの発表があった際、(流石に来日が信じられず)この人のスケジュールをウェブで確認した時、私は愕然とした。殆どの月に於いて、その半分以上がアイスショウの日程で埋まっていたのである。そしてその合間を縫うように5月14日にジャパン・オープンがある。しかも、その日も元は他のアイスショウで埋まっていたと思しく……。実際問題、試合の日だけそこにいれば良いってものでもないし、ショウの無い日は移動やリハーサルで埋まっているのだろうと気付いた瞬間に、この人は本当に――もうすぐ滑れなくなるのだ、と。そう、痛感した。
ここを観に来てくださってる方でアレクセイ・ヤグディンを知らない人は余りいないと思うのだけど、一応説明しておくと、ヤグディンというのはソルトレイク五輪の金メダリストであり、2002年に長野で行われた世界選手権の金メダリストでもある。
その体力的にも技術的にも絶頂期にあった年の秋のグランプリシリーズで、彼は脚の痛みを訴えて試合を途中棄権する。そして二度と、競技場としてのリンクに戻る事はなかった。
股関節の先天性疾患だったのだと云う。旧採点当時、表彰台に昇るには絶対に必要だった4回転ジャンプを禁じられ、彼はそのまま引退を余儀なくされた。
実を言うと、私は当時ヤグディンに対しては特に好意的な感情を持っていなかった事もあって、この時期の彼に対する記憶が殆どない。
ただ、今になって思う事は沢山あって……でも、それは全部プルシェンコと絡んでくる事だから、言葉にする事もまだままなないと言うか……こうして書き始めたは良いものの、何を書けば良いのか、実は判っていません。
ただ、ヤグディンとプルシェンコが争っていたあの数年間、ファンとしてはとても幸せだったのだと思います。トリノのプルシェンコって、凄かったでしょう。けれど、ヤグディンは当時もっと、凄かったんです。ソルトレイク五輪は、ヤグディンもプルシェンコも、本気でベストを尽くして、そうしないと金メダルなんて、絶対に無理だったから。だから今でも、私はプルシェンコのあの『カルメン』が忘れられないし、ヤグディンの『ウィンター』も好き。
本当に、彼等の戦いは凄かった。
当時はその裏の確執や、国の事情なんかも、何も知らなかったけれど。ただ、素人目にも、現在とはレベルが違うのだと判ってしまうほどに、壮絶な時代でした。
ヤグディンの持つ先天性疾患は比較的一般的なもので、実はかなり多くの人が抱えているそうです。(遺伝的な事を鑑みると)多分私もそうだと思います。でも、基本的に20代で発露するものではない。普通に生活してれば50代くらいで発現するもので、でも、一度出てしまったら20年に一度くらいは手術が必要になるのだとか。
一度露呈したら、普通に生活していても20年に一度の手術が必要になるというのに。
彼は未だに、プロとして世界中を飛び回ってショウをしている。それも、物凄い密度のスケジュールで――。
その、不完全だった脚。
それが元で、壊れてしまった臀。
世界一美しいと謳われたトリプルアクセルを、彼は多分、もう跳ぶ事ができない。
そしてこれが、彼の滑りを直接この眼で観る事ができる、最後になるかも知れない。
だから、今日の彼がどんな滑りであったとしても、私はスタンディングオベーションをしたい。例えそれが、私独りだけだったとしても。
たった数年の間に世界の頂点と大いなる挫折を経験し、それでも起ち上がったソルトレイクの覇者。
ウルマノフ、クーリックを経て、プルシェンコと共にロシアの栄華を築き上げた天才スケーター、アレクセイ・ヤグディン。
今日はこのフィギュアスケートブームに沸く日本に、こんなシーズン外れのコンペティションの為に来日してくれたヤグディンを始めとする海外選手達と、我らが日本を代表して滑る選手達を観る為に、さいたまスーパーアリーナへ行って来ます。
【サイト内関連リンク】
■フィギュアスケート - 全日本メダリストオンアイス
■今思い知る、GPFの違和感 - クワドラプルのないフィギュア。
■トリノ五輪の季節を、過去に向かって走る。
■クワドラプル・ジャンパに賛辞を。
■もう在ない『史上最高最強の王者』の幻影。
■メダルの先に、孤高の途はまだ続く。
■現在、そこにいる王者に。
■「天才の『何某(なにがし)』」。
■傷ついた白鳥は、クワドラプルの夢を視たか。
■プリンセス&プリンス・オン・ジ・アイス 2
■Alexei Yagudinの『Overcome』
関連リンクって言うか、プルシェンコの話をすると必ず触れてるってだけだな……。
ところで、この大会は新採点だと聞いているけど、ヤグディンは何を滑るのかな……。できればヤグディンだけ旧採点適用して欲しいんだけど。まぁそれは……本田も一緒か。
2006年05月14日
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アリョーシャのfanで来日するたびに会場に足を運んでいます。
記事の中の4回転ジャンプのないフィギュア・・・私も共感です。どこか物足りなさを感じてしまっています。
私の中での黄金期はプルシェンコとアリョーシャの勝負のときでした。
今回のトリノはプル君のEXが一番好きでした。
優雅でしたよね。今思い出しても綺麗です。
プル君来シーズンは大会に出ないみたいですね。とても残念です。
初めまして。
本当に、ヤグディンとプルシェンコが戦っていた時代は素晴らしかったですね……と、今更ながらに思います。寧ろ、彼等がデッドヒートを繰り広げていた頃は、現在のように真剣にフィギュアスケートを観ていなかったので、それについては今更ながらに悔やんでいたりするのですが。
プルシェンコも、来シーズンは試合には出ないとの事ですけれど……この彼の休戦宣言、意外にも私、件の4回転の記事を書いていた頃ほど、切羽詰った感はなかったりするんですよね。ソルトレイクシーズンに活躍した選手、特に本田の引退を認識した時にはかなりショックを受けたのですが、ゲーブルも引退表明、プルシェンコも五輪金獲得と、こう――本当に、ひとつの時代の区切りを観てしまった気がして、逆にかえって落ち着いてしまったようです。
そういう区切りの時期に、ヤグディンのソルトレイクのプロを観られたのもまた、自分にとっては意味深い出来事のように思えます。
meiさまも、ジャパンオープンの『ウィンター』を観る事ができたのですね。(ブログの方を拝見させていただきました)実は私も翌日になっても、あの『ウィンター』を思い出して夢心地でした。う〜ん、やっぱりファンはみんなそうなのかな。(苦笑)
こんばんは。コメント遅くなりました。
アリョーシャが結婚するそうです。fanとしては喜ばしんですが、ちょっと気になることを言っているようなので心配も反面。英語が苦手なのでどこまで読み取れたかは?ですが。。(記事が英語で・・・)
私もキャーキャーいって彼等のデットヒートは見ていたので今ほど冷静に見てはいなかったのでビデオを譲っていただいたりして見直してます。
う〜ん。最新のインタビュー記事を読む限り、どうやら彼、結婚はしないみたいですよ……?
恋人とは破局してしまった模様。彼にはいい加減幸せになって欲しいんですけども。まぁ個人的には、強いて結婚して欲しいとかして欲しくないとか、そういう事はないんですが……。
ただ、今回の場合、結婚と破局の記事の出方が微妙なタイミングで何とも……。