ただ今、日本時刻4時50分。トリノオリンピックの開会式真っ最中である、が。
――長野オリンピックの時の事を、今でも折に触れて思い出す。
フィリップ・キャンデロロという選手の名前を、初めてきちんと覚えたオリンピックだ。私がフィギュアスケートの試合に足を運ぶ切っ掛けにもなった、とても影響を受けた大会である。
しかし、キャンデロロはその4年後に開かれるソルトレイクシティオリンピックでは、既に現役を引退していた。
ソルトレイクシティ五輪と言えば、フィギュアスケート男子シングルの技術はここに極まれり――という程にレベルが高くなった時代で、ヤグディンとプルシェンコの天才対決に世界中の注目が集まった。また、ペアの八百長疑惑も大いに湧いた。金メダル2個なんて、1位が旧東側体制国且つ2位が旧西側体制国で、共にアングロサクソンじゃなきゃ絶対出ない――なんて話は4年前にも書いたとおり。
しかし私はその頃、既に引退したキャンデロロを想い、キャンデロロが観たくて仕方がなかった。長野オリンピックのキャンデロロの勇姿ばかりを思い出し、ヤグディンの金メダルも、当時既にちょっと好きだったプルシェンコの銀メダルも、入賞を果たした本田武史の事も、全く眼に入らなかった。ただ、キャンデロロに焦がれ、金メダルを売る様な政治的色合いを帯びたオリンピックという大会を、虚しく思っただけだった。
そしてまた月日は過ぎ、トリノオリンピックがやって来た。フィギュアスケートは採点方式が変わった。旧採点を生きた選手の「我々は機械じゃない」という悲痛な叫びと、「これじゃフリースケーティングというより、ロングプログラムだ」という人々の皮肉を物ともせず、4回転を跳べない選手が平然とメダルを狙ってくる、新採点方式のオリンピックが開幕した。
ここに来て私は、今度は4年前に過ぎ去ったソルトレイクシティオリンピックに想いを馳せる。ヤグディンもプルシェンコも、ゲーブルも本田もみんな4回転を跳んでいた。ショートプログラムで2位につけても、終にメダルを取れなかった本田武史。テクニカルメリット最高点の6.0を幾つも叩き出したヤグディンのウィンター。幼い頃から神童と呼ばれ、天才の渾名を欲しいままにしていたプルシェンコの演技で初めて観た、着地の失敗。そんな過去の映像を、私は人々がトリノに熱狂するこの時期に追いかける。
ソルトレイクシティ程の戦いは、多分私が生きている間にはもう観る事はないのかも知れない。トリノへの期待は日に日に薄くなり、苛つきが増した。もう、とうの昔にキャンデロロはいない。アブトもヤグディンもいなくなり、遂に本田武史もいなくなってしまった。
時代は流れる。
消え往く本質的に『フリー』なフリープログラムと、クワドラプル・ジャンパ達。
そこに、プルシェンコだけが踏み留まっている。
プルシェンコの跡に、前回のオリンピックに対する拘り故か、4回転への挑戦を棄てない選手達が細く続く。
順当に行けば、金メダルはプルシェンコのものだろう。今回はそれを願って止まない。高橋には、まだメダルなんて早過ぎる。彼は5位以下の順位をつけて帰ってくるくらいで丁度良いと、本気でそう思う。だって彼は、4回転を跳べない。日本人の体格でも4回転を跳べるのだと、それを証明した本田の為にも、跳んで欲しい。その先にあるメダルなら、どんなにか嬉しいだろう。でも、それでも今回は4位までだ。
まだソルトレイクシティ五輪から4年。せめて私が生きている間だけでも――というより、私が執着を手放せない間だけでも、メダルはクワドラプル・ジャンパ達のものであって欲しい。そんなふうに思う。
素人の我侭だけどね。
2006年02月11日
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Weblog: 日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜
Tracked: 2006-02-11 05:35





ソルトレークシティほどの戦いが見れないと思うのは同感。あの時のプルシェンコのカルメンも直前に内容変えたとは思えない完成度で、とっても力入ってましたよね。アスリート達の戦いだったなぁ。今回はプルシェンコに魅せて欲しいですね!!また遊びにきまーす☆
ねりなが、旧東側体制とか、素人などを八百長しなかった?
今回は本当にプルシェンコに金メダルが欲しいです。
取れなかったら多分、ショックで会社休む……。
私もあの熱き心の日々をおもいだしています。
ソルトレイクはフィリップがいない。。
トリノはなんとかプルシェンコ君の成長した姿を見たいが為にしっかりみました。
昔の採点方法と今全く違っているので
楽しみはエキシビジョンに。。。
なのが残念ですよね。
見て楽しみたい、、という見方は間違っているのかな。
やっぱり、キャンデロロはどうしても避けて通れないというか……。(笑)
2001年のグランプリファイナル、彼が既に引退しているのも知らずに「とにかく東京で国際試合が観られるんだから行ってみよう!」と――そう思わせてくれたのがキャンデロロなんです。それで、独りでのこのこ代々木のアイスリンクに行ったのが、人生で初めての会場観戦でした。
だから、私にとってキャンデロロというのは、とっても大切な選手で。彼が来日する時には今度こそ観に行こうって、そう思ってます。
プルシェンコも、エキシビションは魅せてくれるタイプなのでかなり楽しみです。フィギュアは芸術的な面もありますし、観て娯しみたい、と思ってしまいますよね、我々は。その「芸術点」みたいなところを数値化するのって、とっても難しいし、ある意味ナンセンスなのではとも思うのですが。とは言え、基準あっての競技ですしね……。
でも、今の採点基準になって良くなったところが、どうもピンと来ないんですよね。誰がどんな点をつけたか判らなくなったという面に於いては、良くなったんでしょうけども。