2006年02月06日

今思い知る、GPFの違和感 - クワドラプルのないフィギュア。

 トリノ五輪まであと少しなので、またフィギュアスケートの話をする。ただ、今回はある意味とっても失礼な事を堂々と語るので、怒る人もいるかも知れない。でも、これは保科志穂という素人の個人的な感覚の問題だし、本田武史の引退にかなり当てられてる部分もあると思うので、一個人の意見として読み流して欲しい。

 私はもう本当に本当に素人なので、特に新になってからの採点ルールについてはかなり曖昧だ。新旧問わず、やっちゃいけない事とかはそれなりに判るけど(ロロスピンとかバック転とかな。)、各技術の名称とかもアバウトにしか覚えてない。ジャンプの回数とか種類も、さっぱり見分けがつかない。そりゃ会場観戦だと、4回転であれば流石に「あ、今のって違う!」って程度には判るけど。でもそれが明確に4回転だと見分けがついているのかというと、決してそうではない。
 さて。その程度の知識と動体視力しかない人間が、何故かグランプリファイナルだけは、日本開催(会場は代々木)の度に足を運んでいるという不思議。とにかく、ついこの前も2005-06年のファイナルに行ってきた訳だけど……実は、男子シングルを観てる間、物凄く違和感があった。何故かと言うと、もう殆ど憶えていないのにも関わらず、2000-01年のファイナルの時の方が迫力があったような気がしたからだ。とは言え、あの時は日本人選手が全然出てなかったし、ソルトレイクの前だったこともあって「知らない選手ばっかりだな」みたいな感じでもあったから、単純に外人の多さに圧倒されただけなのかなぁ、とか思って暫くは気にしなかった。でも、その後に全日本のメダリストオンアイスを観に行って、違和感は更に膨れ上がった。その時も書いているけれど、既に引退済みのヤグディンと今季で引退の本田が、高橋や織田より、どう観ても一番巧いように視えたのだ。どう観ても――と言うのは、前々週のグランプリファイナルを含めて観ても、という意味で。しかし、この理由は年末年始にフィギュアスケートの映像を幾つか観ていく内に、程なくして知れた。
 2001年と2005年では、男子全体のジャンプの質が違うのだ。成功率も回転数も違う。2001年の男子のレベルが異常に高い。その時の出場選手にはヤグディン、プルシェンコ、ゲーブルと、翌年のソルトレーク五輪の金銀銅メダリストが揃ってる。ソルトレークの時は、本田武史もショートプログラムの時点で2位に着けていた。そうして彼らは皆、最盛期には4回転のジャンプを跳ぶ事ができた選手だ。(プルシェンコはまだ跳べるけど。)確か、4回転で跳べるジャンプの種類も、複数持っていたはず。無論、ヤグディンにしても本田にしても、4回転を跳ぶことで選手生命が短くなってしまった事は否めないのだろう。それでも本田は、今シーズンも4回転に拘っていた。最後のインタビューでも、彼は繰り返し「4回転抜きのプログラムにすることはプライドが許さない」と語っていた。ヤグディンとプルシェンコとゲーブルと、4回転を跳ぶ選手達と、張り合ってきた時代があるのだ。
 繰り返すようだけど、新採点のルールが殆ど解らない。TVの解説を聞かないと、ジャンプの回転数の見分けがつかない。素人なのだ。だから余計、判らない。私は最近、男子の4回転をまともに観た事があったのだろうか。多分、ない気がする。採点ルールが解からないんだけど、とにかく今の採点方法だと、4回転を跳ぶ必要がないらしい。ちょっと前まで、4回転を跳ばないとメダルなんて手が届かなかった時代があったのに。複数の4回転を持っていても、メダルに手が届かない選手だっていたのに。今は誰も4回転を跳ばない。跳ばなくても、優勝できる。
 先の四大陸選手権では、織田が優勝したのだという。織田はちょっと前のインタビューで「4回転は半分以上の確率でちゃんと降りていた」って応えてる。ということは、成功率は6割〜8割ってところなのだろう。(9割飛べれば、本戦でも跳ぶだろうし。)本田は2003年の同大会で、フリースケーティングで2種類3度の4回転ジャンプを跳んで優勝している。彼は世界でもトップレベルの4回転ジャンパだった。その時点に於いては、プルシェンコに勝っていた節さえあった。しかし、それからたった3年しか経っていない今季。織田はあの滑りで四大陸選手権で優勝してしまった――彼は4回転を一度も跳ばなかった。それでも優勝は優勝。しかし――それは今季で引退する世界の本田武史に、余りにも失礼ではないか?

 あれだけ跳ばなきゃ、寧ろあれだけ跳んでも、彼は終にオリンピックでメダルを手にすることもなかったというのに。

 私は(旧採点の)技術点で6.0なんて、ヤグディンとプルシェンコと本田以外では、終に観る事がなかった。ヤグディンとプルシェンコは、本当に天与の才を持っていた。この点については、本田は運が良かったとも悪かったとも思う。彼らが凄すぎて、世界の頂点に立つ事が適わなかった事については、本当に運が悪かった。あと、ほんの少し遅く生まれていれば、現在のように4回転を跳ばなくても優勝することができる時代であったなら、彼ももう少し長く現役でいられたとも思うし、高橋も織田も足元にも及ばない圧倒的な技術力で、日本王者――というよりは、世界王者として君臨できただろう。でも、彼は男子シングルの黄金期に、世界のトップとタメ張って滑り続けたという実績が残ってる。シニアデビュー戦でキャンデロロやストイコと同じグループで滑り、時にヤグディンにジャンプを教え、プルシェンコと語った。複数の4回転のレパートリを跳べるのは、そんな時代に生きたからこそであろう。今現在、それが可能な人間が、世界に何人いる事か。というか、この記事を書きながら泣いている私は何なんだ………………………なんで世界レベルでデグレードしてんだよ。懐古主義は年寄りくさくて嫌なのに、何で心の底から、涙が出るほどにそれを悔しいと思うのか。

 今年のトリノ五輪を楽しみにしている。クワドラプル無しの金メダリストが出たら、それはもう本当に、プルシェンコや本田に対する侮辱だと、私はそう思う。クワドラプル無しで来るなら、それだけのものを、我々に見せろ。


 しかし、元々ヤグディンとプルシェンコならプルシェンコ派だった私が、本田の引退でこの有様とは。プルシェンコ引退の時にはどうなっちゃうんだろう……。
posted by HOSHINA Shiho at 01:19| Comment(6) | TrackBack(0) | フィギュアスケート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。今日たまたま「ハッピーまりちゃん」の検索していて、昨年志穂さんの書いている真理絵についての記事が引っかかりここを見つけました。
(真理絵評については長くなるのでまたの機会に)

 GPF迫力のなさに同感です。え?って感じでした。
 私も本田のファンで本田最後のアランフェスには涙しました(演技最後の本田の握りこぶしの震に・・・)私もフィギュア自体は素人ですが、本田の力強い4回転サルコーや心にしみる演技が大好きでした。彼の引退は本当に残念。NHK杯はかなり痛々しかった。採点も低くてびっくりしました。怪我さえしなければ…。
 しかしフィギュアの採点方式はどうしてあんなにコロコロと変わるのでしょう。選手がかわいそうな気がします。確かに前回のソルトレークでは男子は4回転飛べないとメダルはないよという感じでしたよね。
 本田は練習では4回転を飛べるからと「練習場のチャンピョン」だとか言われてたことがありましたっけ…。もう本当にかわいそうです。でも本田の滑りはジャンプだけじゃなくって表現力も備わってましたよね。
 ソルトレークの本田のエキシビジョンもジャズにあわせてリズミカルでとても楽しかった☆アメリカで表現力とかいっぱい磨いたんだなーって感動してました。今後も本田の多方面での活躍を応援していきたいです!!
 って本田についてつらつら書きましたが、実は私は大のヤグ様ファンです。志穂さんプルシェンコ派でしたよね、ごめんなさい。毎朝ヤグディンのソルトレークのSPウインターを見てから1日が始まるという日々をかなり過ごしてきました。
 昨年の冬ヤグディンが八木沼純子さんのイベントにゲストで来ていて、初めて肉眼で見て大興奮しました!!ショーの最後にほんの少ししか滑ってくれなかったけど…。でも生サインゲット!彼は本当にアスリートって感じでかっこよかったー!!
 なんだかんだいってもトリノも楽しみ。でも女子ばかり報道されてて男子がかわいそう。というか男子フィギュアが好きなんです!!
 トリノでは私にとっての第二のヤグディンは現れるのかなー。

また遊びに来てもいいですか?
Posted by のりのり at 2006年02月08日 11:12
>のりのり様
はじめまして。まりちゃん絡みでいらしてくださるとは!
15年前に完結してしまってる漫画だから仕方ないとは言え
周囲にはなかなか話せる人がいないので、とっても嬉しいです。
真理絵……というか当子に関しては、
私と違う見解をお持ちの方が圧倒的だと思いますので、
 #というか、私も「これって本当は違うかも」と思って
 #書いてる部分もあったので
色々とご意見戴けると嬉しいです。

本田武史の件に関してはもう……本当はもっともっと
素人ながらに言いたい事もあるのですが、
殆ど感情だけで文章にならなくて。
本当にどうなっちゃったんでしょうね、近年の男子シングル。
綺麗な感じも嫌いじゃないし、
寧ろバトルみたいなのも大好きなのですが、
それもある程度の技術力がないと、
まるで女子シングルを観てるような気分になっちゃうんですよね。
どちらにしても、本田には今後自由に滑ってもらいたいです。
彼は採点方式が変わっても、4回転を譲らなかった。
それについては、私は彼を大いに評価したいと思います。

ヤグディンについては……どちらかというとプル、というだけで
私もかなり好きなのですよ。(笑)
ソルトレイクのウィンターはもう本当に素晴らしいです。
ステップだけであれだけ魅せてくれるのは
ヤグディンだけだと思います。

また、折に触れ機会がありましたら、いらしてくださいませ。
Posted by 志穂。 at 2006年02月09日 00:26
 実は、昨日このコメントのあと、ブログデビューしました!!「LOLLIPOPS」mahamoの日記です。全くのブログ初心者なのでわからないこといっぱいですが頑張ります☆
 そのうちまりちゃんネタもぼちぼちいこうと思っています(笑)スケートネタもかぶっちゃいましたが記事載せました。
よかったらこちらにも遊びに来てください☆
全くのブログ初心者なのでわからないこといっぱいですが頑張ります☆

お気に入り日記にリンクはってもいいですか?
よっかたら志穂さんもお気に入りに入れちゃってください♪

Posted by のりのり at 2006年02月09日 23:35
志穂さん
 はじめまして!ヤグディンを検索していたら、こちらにたどり着きました。私も長野の時からフィギュアのファンになりました。男子シングルでは、やっぱりキャンデ・ロロが一番良かったです。実はその時たまたま夜中にテレビで少しだけみて、フィギュアの知識も選手も全く分からない状態でした。(今もジャンプの種類とかよく分かりません。新採点方式なんて何だか味気なくて余計に覚える気がしません。昔のように、5、9とか6、0の方が良くないですか?)男子で興味を持ちその後女子のフリーを見たら、すごく感動してしまいました。どの選手も個性があって、最終グループの選手には全員メダルをあげたいくらいでした。
 その後ソルトレークまでの間、いくつかの試合をテレビで見るようになって、オリンピックの舞台というのは本当にレベルの高いものなんだと、何度も思いました。そしてソルトレークでの男子シングル!ヤグディンの演技に心底感動しました。本当はプルシェンコには、ショートで転倒しないで最後まで勝敗の分からない闘いをしてくれたら、と思いましたが。私はプルシェンコも好きです。実はソルトレークの時も最初はプルシェンコの方が気にかかっていました。でも、ヤグディンの力強く華麗な演技に吸い込まれてしまいました。 
 最近動画で当時の演技を何度も見ています。ヤグディンの自伝も買いました。今更ながら5年前に戻ってもっとちゃんといろんな試合を見たかった、と思います。
 突然好き勝手なことを書いてすみません。志穂さんの記事を読んでいたら、(志穂さんはプルシェンコ派、私はヤグディン派と違いますが)いろいろなところで共感しました。ソルトレークの王者対決、トリノでのプルシェンコの独壇場、新採点方式に伴う4回転の減少、などなど・・・。
 私はフィギュアは好きですが、知識はあまりありません。それでも、最近のフィギュア界のレベルの低さには何だか悲しくなってしまいます。日本人選手が活躍するのは嬉しいことのはずですが、本田選手の時代のようにどんなに日本人が頑張っても世界の壁は厚い、という方が良かった気がします。こんな言い方は悪いかもしれませんが。私は本田選手も好きでしたが、今の日本のトップと比べてもレベルが違いましたよね。それでも、オリンピックでメダルを取ることなどないだろうな、と思うくらい世界にはすごい選手がたくさんいたように思います。
 話は変わりますが、フィギュアの試合を見に行くには普通にチケットを取ることはできないんでしょうか。最近、ヤグディンの演技を一度でいいから生で観たいと思っています。本当は現役の時に観たかったけど。ど素人の私に教えていただけませんか。
Posted by たろちゃん at 2006年11月15日 20:59
>たろちゃんさま
 初めまして。コメントありがとうございます。
 確かに、最近はソルトレイク五輪当時とは随分雰囲気も変わってしまっていますね。
 先のスケート・アメリカで、織田信成とエヴァン・ライサチェックが、4回転に挑戦さえもしないで表彰台の1位と2位に並んだのを知った時には、嬉しいのか哀しいのか解らない、何とも不思議な気分になりました。今までもこういう事はあったのかも知れませんが、私も4回転に拘りを持つようになったのがここ最近なので、意識して観るようになってしまうと、どうも戴けないな、と。
 でも、こうしてトリノ五輪も終わって新しいシーズンが始まり、幾つかの試合を眺めていると、矢張り今頑張っている選手達の事も、やっぱり応援せずにはいられないというか……。
 だってステファン・ランビエールもブライアン・ジュベールもフリーには必ず4回転を入れているし、中庭健介に至ってはショートにさえ4回転を組み込んでいますしね。ジェフリー・バトルだって、あの時代を知っているからこそなのか……成功率の低い4回転を必ず組み込んで来ている。確かにヤグディンとプルシェンコのいた時代は別格です。彼らに喰らいついて行こうと、全ての選手達のレベルが芋蔓式に上がって行った時代なのだと思います。ヤグディンもプルシェンコも素晴らしくて、でも、彼らの後ろに常に控え続けた本田もゲーブルも素晴らしかったと――今はそう思います。あのような時代が今後巡って来る事があったとしても、それはきっと随分と先になると思いますし、もしかしたら、もう二度とないかも知れない。
 それでも、というよりはだからこそ、私は今現役で戦い続ける選手達も、応援し続けたいと思うようになりました。選手の引退は、本当に突然だから。

 スケートの試合のチケットは、各種プレイガイドでコンサート等と同じように普通に購入する事ができます。最近は競争率も高いようですが、余程良い席狙いという訳でなければ、当日券がある場合もあるようです。東京近郊の試合の事しか判らないのですが、ダフ屋さえチケットを持っていなかった等というのは、先シーズンの全日本くらいではないでしょうか。
Posted by 志穂。 at 2006年11月17日 02:32
志穂さん
 お返事ありがとうございました!
 確かに選手の引退というのは突然ですね。金メダルを取って早々にプロに転向する人もいれば、怪我のせいで無念ながら一線を退いたり・・・。でもどちらにしろあの頃のフィギュア界のすごさは素人の私にとっても衝撃的で、また何度も感動させられました。またあのような時代が巡ってほしいと思う反面、私にとってヤグディン以上の選手はもう現れないと思います。今になってそれだけ引きずるくらいヤグディンのオリンピックの演技は特別でした。
 でももちろん私も志穂さんのように、今のフィギュアも応援していきたいと思っています。チケットですが、昔からフィギュアのチケットは競争率が高いと聞いていましたので、みなさんどのように取っているのかと思ったので。コンサートと同じなのですね。どうもありがとうございました。
 これからも、志穂さんの記事楽しみにしてます!
Posted by たろちゃん at 2006年11月17日 21:11
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。