2009年02月13日

もう一度、「最後の『ボレロ』」を。── ベジャール追悼特別公演シリーズV ベジャール・ガラ

 9日にモーリス・ベジャール追悼特別公演、東京バレエ団ベジャール・ガラに行って参りました。
 と、言っても。以前にも話した事があるかもしれないけれど、実は私、正直なところモーリス・ベジャールという振付師の創る振りが苦手です。(断言。)難解なのだ。何しろ、以前観た『ドン・ジョヴァンニ』には、主人公であるドン・ジョヴァンニが全く出てこなかった。それだけでも、この人の創る作品がいかに前衛的であるかを物語っていると言うもので。
 それでもあえて今回出掛ける理由があったとしたなら、矢張りそれは、今回限りの復活と銘打たれたシルヴィ・ギエムの『ボレロ』。勿論、2005年の『シルヴィ・ギエム 最後の「ボレロ」』も、観に行きはした──のだけれど。何しろあの時の私は、左の目が視えてはいなかった。
 だからもうずっと、できれば両の目が視える時に、ギエムのボレロが観たかった──と。そう、思っていたのだ。だから今回の公演はある意味渡りに船で……勿論、追悼公演だから、そういう言い方はとても失礼ではあるのだけれど。それでもとても、楽しみにしていたのだ。
「ギリシャの踊り」
 以前にも観た事のある作品。ベジャールの象徴的で前衛的な側面を物凄く色濃く出していると言うか……ある意味、とても苦手な作品です。音楽は素敵で好きなのだけど。苦手意識があるだけに、できれば割と好きなダンサー──上野水香が出ていて中島周のソロがある回──を観に行ければ良かったなぁ、とも思ったのですが、それを選択すると首藤康之が観られないという事で、チケットの購入時にちょっとした葛藤がありました。結局(特に上野水香に関しては完全に)諦めた訳ですが。
 因みに隣の席の女性は、舞台無視して物凄い勢いで眠ってました。まぁ、ギエム目当てで他の演目はどうでも良かったみたいだけど。

「中国の不思議な役人」
 この作品、原作のストーリィは割と好きなんです。(笑)頽廃的で、結構好みなストーリィ展開なのですが──何しろベジャールの手にかかると、その話の主人公が出てこなかったりしますから、この作品も一体どうなる事か……とも思いつつ、中国の役人は首藤康之が演じると言う事で、ストーリィは比較的忠実なのかな、等と期待してもみたのですが。
 しかし、そこは逆の意味で期待を裏切らないベジャール作品──と言う事で、ミミ(主人公とも言える女性)は思い切り男性が演じておりました……。しかも役名は『無二の無頼漢』。何故そうなる。本来は臆病な女性のはずなのですが……。そして、そんな彼女を演じたのは宮本祐宜でした。
 しかし首藤康之と言い、宮本祐宜と言い、踊りが大きい。ふたりだけ別世界にいるみたいでした。ホント、あれだけコールドが大人数いるのに、とにかく目立つ。特に首藤康之に関しては、2006年に『HS06』を観た時にも、外国人と並んで尚、強烈な存在感があったのですが、今回も別格でした。この話における彼は何度も殺される役ですし、その度に不気味に起き上がってくるのがまた──この回選んで良かった。不気味で最高でした。

「ボレロ」
『ギリシャの踊り』の時にはがっつり眠っていた隣の女性ですが、『ボレロ』になった途端、オペラグラス持って大暴れ……。興奮するのは結構だけど、腕の動きが視界に入ってきて大変不快でした。機嫌良く眠り続けてくれてれば良かったのに。お父様(パパだったのかも)がご一緒だったのに注意なさらないし……全く。別に、オペラグラスを持っている人が不快だと言っている訳ではありません。そんな方は沢山いらっしゃいます。暴れなきゃ良いんです。
 さて。
 ボレロというのは約15分の曲ですが、この演目の恐ろしさは、この約15分の間、観客の視線が緋い円卓で踊るただ独り注がれ続けると言う点にあると思います。良く観るとコールドもかなり壮観(クライマックスでは、コールドの男性全員が円卓の周囲に集まって激しい踊りをするのですが、これがまた誰一人指一本ぶつからない訳です。これって凄い事だと思うんですけど。)なのですが、何しろスポットライトは究極的に円卓の上を照らし続けるし、曲はずっと同じパタンの繰り返しで休む部分がありません。しかも、クライマックスは一番最後。こんな意地の悪い音楽と意地の悪い演出って……とか思うのですが。
 でも、だからこそ、ベジャールの振付ける『ボレロ』という作品を完全に踊り切る事のできるダンサーは素晴らしいのだと。そう思います。
 そんな訳で、シルヴィ・ギエムという世紀の天才ダンサーのボレロを再び、しかも本当の最後の回を観る事が出来たことを、とても幸せに思います。拍手することも忘れる程の圧倒が、そこにはあって。
 今度こそ、観ましたとも。ギエムのボレロを。
 そんな感じで、9日にはモーリス・ベジャールの作品をがっつり観た訳ですが、12日にはベジャールの系統を引く振付家であるジョン・ノイマイヤーの舞台を観る事になります。(というか、もう観てきた。)
 という訳で、その辺もまた後程。
posted by HOSHINA Shiho at 00:50| Comment(1) | TrackBack(0) | コンサート・公演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
動きって…なんだろう…?
Posted by BlogPetのねりな at 2009年02月13日 15:49
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